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Contemporary Doll Artist
mican



  • 古来より依り代(よりしろ)として創られてきたヒトガタ
  • ヒトガタもヒトと共に死を背負っています
  • 生と死の間にあるヒトをみつめていきながら 私はヒトガタを創っていきたいと思います


球体関節人形

  • ヒト型の造形物は世界中のどの文明・民族にもみられます。
  • その起源は多産・豊穣を祈ったり、死者への鎮魂として使われるもので、呪術的・宗教的な意味合いが強かったようです。
  • 文明が発展していくとヒト型も偶像、彫刻、人形など分別されるようになり、現代のフィギュアに至るまで様々なヒト型がつくられました。
  • 球体間節人形もそうしたヒト型の一つです。
  • 球体関節人形は、16世紀にデューラー派によって作成された関節人形が、20世紀初頭ハンス・ベルメールに見出されアートとして昇華されたものがその発端です。
  • 1902年、ポーランドに生まれたベルメールはアナグラムとして人形の肢体に関節球をかまし、様々に組み合わせた人形を創り、フェティシズムな写真を発表しました。それらの作品はシュルレアリスム宣言をしたブルトンに担ぎ出され、注目を浴びることになります。
  • bellmer.jpgベルメールの球体関節人形の写真
  • 日本では1960年代頃渋澤龍彦によりベルメールの球体関節人形が紹介されました。これに影響され球体関節人形をアートとして表現する作家達があらわれます。
  • そういった作家達が人形教室を開き、その流れが現在でも若者に受け継がれ、個々それぞれ表現を模索しています。
  • 球体関節人形は現代では日本独特の発展をしていると言えるでしょう。
  • 私も2006年に人形教室に入り、初めに球体関節人形を学びました。
  • ベルメールはフェティシズムとして球体関節をとらえ表現しました。
  • 私は関節球を動くこと=生の記号(シーニュ)としてとらえ表現しています。
  • その発想のきっかけになっているのが太極拳です。
  • 太極拳では関節を球と見立て円運動を繰り返し行うことにより天と地とむすばれた境地を目指します。フェティシズムというとらえ方よりも、こちらのとらえ方が私には合っているようです。
  • これからもヒトをみつめていきながらヒトガタを創っていきたいと思います。
  • 2012.6

ガラスの眼

  • ガラスは今から約5千年前のメソポタミヤ文明で発祥しました。人類がつくったはじめての人工素材だそうです。この時代は型にガラス粉を入れ焼成する現代でいうパート・ドゥ・ヴェールと呼ばれる技法で創られていました。
  • しかしこの技法は手間がかかりやがて廃れ、ガラス形成を瞬時にする吹きガラスの技法が普及していきます。
  • この古代ガラス技法を復活させたは19世紀末アール・ヌーヴォ―のガラス作家達です。しかしその技法は秘伝とされた為、作家達の死と共に断絶してしまいました。
  • そしてここ数十年の間、ガラス技術は改めて見直され急激に進歩しています。
  • 現在、ガラスは食器などにつかわれるだけでなく、電子機器や通信機器など幅広い分野で必要不可欠なものとなっています。
  • ヨーロッパでは、義眼はもともと吹きガラスで創られたそうです。日本では、平安時代末期以降、仏像に水晶で創られた玉眼が盛んに用いられ、像に命を吹き込んできました。現代では、人形の眼はガラスの他にプラスチック・シリコンなどの素材でも創られています。
  • 眼の表現は人形の命ともいえます。
  • 私も初め樹脂を使ったり、バーナーワークの教室に通ったりしましたが、なかなか自分の作品に合う眼にならず、自分の眼ができるまでは木の素材で眼を創るようになりました。そうして模索している中、パート・ドゥ・ヴェールという技法に出会いました。古代ガラス技法です。この技法での義眼を創る方法は確立されてないので、まったくゼロからの挑戦となりました。試行錯誤しながら、最近やっと自分の作風に合うガラス眼ができつつあります。引き続き、ディテールや色味調整など研究を続けたいです。また、台やパーツの素材としての展開もしていきたいです。
  • 2012.6
  • grasseyes201206.JPGパート・ドゥ・ヴェール技法で創った自作のガラス眼